ネタバレあり映画レビュー第1回目「トゥームレイダー ファースト・ミッション」。プライムビデオでおすすめされていたので見てみました。
トゥームレイダーは90年代に生まれたアクションゲーム
トゥームレイダーは人気アクションゲームです。
2001年にはアンジェリーナ・ジョリーが主人公ララ・クロフト役で映画化。ゲームのララがそのまま現実になったような姿で、セクシー&スタイリッシュアクションを全面に出した作風で人気シリーズになりました。
しかし原作ゲームが2013年にリブートされ、女性の力強さと泥臭いアクションへ路線変更。
この映画「トゥームレイダー ファースト・ミッション」は、そのリブートされたゲームを映画化したもので、アンジェリーナ・ジョリーの映画とは全く別物のトゥームレイダーになっています。ちなみにこの映画の原作はスクウェア・エニックス。
鋭い知性、盲信、揺るぎない精神だけを武器とするララ・クロフトは、限界の壁を超え、未知の世界へと過酷な冒険に初めて挑む。生き残ることができたら…「トゥームレイダー」としての名を確立できるだろう。
Prime Videoの作品紹介文
見終わった後にこの作品紹介を読むと、「初めての冒険に挑む」以外は全く当てはまっていないと分かりました。
簡単なあらすじを追いながらの感想です。ネタバレにご注意。
新生ララ・クロフト。舞台は日本の邪馬台国…?
ロンドンで自転車便を生業としながらボクシングジムに通うララ・クロフト。
生活はひっ迫しているようで、通っているボクシングジムの利用料を払えていない。トレーニング後にはオーナーのリンゴを盗み食いして腹の足しにしていた。その後しばらく、冒険と関係のない自転車レースなどのシーンが続く。
この時点ですでに原作ゲームとはかなり違うオリジナル設定。
莫大な資産を持つララの父親は7年前から失踪していた。しかしララはまだ死亡を認めず、遺産を継いでいなかった。そんな中、ララは賞金目的で参加した自転車レースで事故を起こす。
警察へララを引き取りに来た父の会社を引き継いでいる女性に、こんなことはもうやめて遺産を継ぐように説得される。こうしてララは、ようやく遺産を受け継ごうと決心した。
遺産相続の際、父親がララ宛に遺した「カラクリ」(パズル)に隠されたメッセージで、ララは実家の屋敷に父親が何か隠していることを知る。
ララの父親が消えた理由…
ララは放置された実家の屋敷に戻る。隠しメッセージをヒントに父親の隠し部屋を見つけると、ララ宛のビデオメッセージが残されていた。
ビデオメッセージから、父親は亡くなった妻を蘇らせようとオカルトに染まっていたことを知る。
さらに、
・「日本近海の孤島『邪馬台国』に、魔術を操る『卑弥呼』が封印されている」
・その卑弥呼の力を狙う悪の組織がいる
ということを知った父親は、卑弥呼の力が悪の組織に渡らないように単身、邪馬台国に向かうことにした。…とララに向けて映像を残していた。
原作ゲームもぶっとんだ設定だったけれど、こっちのほうが酷い。
父親が消えた理由を知ったララは、メッセージの「資料を全て処分しろ」という指示を無視し、後を追う。
父親が香港から邪馬台国に向かったことを知ったララは、父が日本の皇族から贈られた翡翠のアクセサリーを質屋に入れてお金を作り、そのまま香港へ向かう。
香港でも最初の自転車レースのように、無駄に現地のチンピラと鬼ごっこするシーンがあります。無くていいシーンなのに、結構長い。
香港で出てくる貸し船屋の船長がこの映画の相棒枠。原作での親友枠は日本人ハーフの女の子で、ストーリーに大きく関わってくる重要なキャラでしたが、この相棒には重要な設定はありませんでした。本当にただの香港の貸し船屋のおっさん。
渋るおっさんを説得し、謎の孤島「邪馬台国」へ。島に近づくと急な大嵐に襲われ、船は海に沈んでしまった。それでもララは無事に邪馬台国に流れ着く。
原作ゲームでは邪馬台国は「ドラゴントライアングル」という、一応実際にそう呼ばれる日本近海の、事故の起きやすい危険海域が舞台。さらに「卑弥呼の呪いで島に近づく船や飛行機は事故に遭う」という設定でしたが、映画ではそんな設定は無し。
ちょうど40分で邪馬台国編へ
40分でようやく邪馬台国での物語が始まる。
気を失っていたララが目を覚ますとテントの中。目の前にはマサイアスと名乗る男が、ララが目覚めるのを待っていた。邪馬台国にはマサイアスが率いる悪の組織がすでに上陸していて、封印された卑弥呼の墓を7年前から探していた。
マサイアスとの話の中で、マサイアスが父親を殺したと明かされる。この島の7年間でマサイアスと父親に色々あったらしい。ララが持ってきた父親のノートには卑弥呼の墓の場所が書いてあり、そのノートを見たマサイアスはようやく仕事を終えて帰れると喜ぶ。
父親が死んでいることを聞かされ気の抜けたララは、ふらふらとテントの外へ。テントの外には発掘を進める組織と、労働力として使われている漂流者達がいた。その中に嵐ではぐれたおっさんがいるのを見つけるが、なにもできず、ララも組織に労働力として使われることになる。
漂流者たちを容赦なくこき使う組織。さらに自分も脅されたララは、おっさんの協力で一人脱走する。
ここからやっと原作のゲームを再現したシーンが出てくる。原作ゲームはオープニングムービーでここまで済ませています。
ようやくトゥームレイダーらしいアクションシーンが始まる。
ゲームを再現した逃亡アクションの中で、脇腹に木の枝が貫通して大怪我を負うララ。そのまま海岸まで逃げ延びるが、そこで追手に捕まり、ララは初めて人を手に掛ける。
かなりの距離を逃げて夜の暗闇に隠れていたララを、なんの手掛かりもなく見つける追手が有能すぎる。
追手を返り討ちにしたところを、人影が見ているのに気づく。ララが気づいてその人影を追うと、その正体は殺されたはずの父親だった。
ゲームのララと同じで、脇腹に穴が開いている状態で数メートルの崖を平然と登る。
岸壁の横穴にずっと隠れ住んでいた父親はしばらくララを幻覚だと思いこむが、そのうち幻覚でないと気づく。父親は7年前から、マサイアスたちが卑弥呼の墓を見つけないよう見張るために島に残っていた。
俳優が「ヒミコ…」や「ヤマタィ…」と連呼するのに、字幕では頑なに「女王」「孤島」と書かれていた。
原作ゲームの実写化映画…?
原作要素を入れたいのか入れたくないのか
この映画は原作ゲームの実写化であるはずなのに、あまりに原作要素が少ない。
原作では日本と中国が混ざった、海外がイメージするエセ日本建造物などがたくさん出てきたり、卑弥呼の親衛隊が武士だったり(武士は卑弥呼の没後数百年後にできた職業)するのに、この映画にはそういうエセ日本要素は一切なし。
ストーリー、卑弥呼の設定も、完全に違うものに変わっている。登場人物も大幅に減っていて、その設定も全く別物。
わかりやすく言うと、規模がとにかく小さくなっている。その反面、ロンドンのレースや香港のチンピラシーンなど、無くても成立する無駄なシーンで時間と予算を使っている印象。
制作費1億ドル…?一体どこに…?
ウィキペディアによると、この映画は制作費100億円超え。…でも、とてもそんなに予算のある映画には見えない。
肝心の卑弥呼の墓も、入り口から内部まで、低予算映画のそれ。ギャラの高い俳優が出ているわけでもない。CGも低レベル。
一番予算を使っていそうなのが、ロンドンの街に数十台の自転車を走らせた無駄なレースシーン。あのシーン以外、お金が掛かっているシーンが本当に見当たらない。
制作費100億円って、ニコラス・ケイジ主演で有名俳優も多数出演で、この数十倍の規模の冒険をする名作トレジャーハンター映画「ナショナルトレジャー」と同じ制作費。これはどういうことなんだろう。
感想まとめ
残念。
原作を知らない人が見ても、低クオリティな、まとまりのない映画に見えると思います。
本当に何も考えずに見るのなら、「アデル」や「サハラ」の方がまだトレジャーハンター映画として見られるかもしれません。でも、それならナショナルトレジャーを見たほうが何倍も楽しめます。いやむしろアンジェリーナ・ジョリーの方のトゥームレイダーを見たほうが良い。
原作ゲームはリブートが成功して再び人気ゲームになりましたが、この映画化は失敗にしか思えません。ただなぜか興行収入的には成功しているらしいです。
2丁拳銃になった理由も酷い
何より残念だったのは、2丁拳銃になった理由。
ララ・クロフトといえば大型の2丁拳銃がトレードマーク。
原作ではララをかばって力尽きた父親代わりの恩師の銃を借り、ラスボス戦で初めて2丁拳銃になって戦う。「恩師の遺志を受け継いだ2丁拳銃」というかっこいい設定なのに、この映画では島から脱出後に質屋で見かけて「じゃあこれ買う。」で、2丁拳銃に。
どうしてこうなった。
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