前に書いた「ひげを剃る。女子高生を拾う。」で若干の精神ダメージを受けていたところに、プライムビデオがおすすめしてきたのがこの「スーパーカブ」。
HONDAによって生まれた伝説の超コスパ原付の名前だけがズドン!なタイトル。これは気になります。
クリックするとこれも女子高生もの。でも、女子高生が質実剛健なカブに乗っている。これなら精神ダメージを受けることはないだろうと見てみると…私が癒やし系アニメに求めた理想像そのものでした。
あらすじを追いながらの感想です。ネタバレを見たくない方はご注意。
ドビュッシーのアラベスクから始まるアニメ
この「スーパーカブ」。静止画と、ドビュッシーのアラベスク1番から始まる。
主人公の1日が始まる朝の静けさを、無音や環境音だけでなく、ドビュッシーで表現していた。
なんだこれすごい。この時点ですごく好きな雰囲気。
主人公は「小熊」という一人暮らしの女子高生
親もなく、お金もなく、友達も趣味も夢もない「ないないの女の子」(第一話のサブタイトル)。
朝起きてシャワーを浴び、焼いていない食パンにマーガリンを塗って、立ったまま朝食を済ます。お弁当は炊いた白米を詰めた弁当箱と、インスタントの丼の具。
食事が重要でない時、立ったまま済ますことはあります。ただ、それを女子高生がやっていると悲しい。
舞台は山梨県北杜市。
小熊が通っている高校は高台にあり、息を上げながら自転車で坂を登っていく。その横を、スクーターに乗った生徒が通り過ぎていった。
移動シーンはよく見ると3Dモデルが使われていた。
この通学シーンになって初めて主人公が喋る。さっきの「親もない、お金もない、友達と呼べる人もなく…」というセリフ、だけ。そこからまたしばらく周囲の声や環境音だけの時間が続く。
とてつもなく静かなアニメだこれ!
下校時、スクーターに乗った生徒に追い抜かれる。小熊は遠ざかるスクーター生徒の背中をじっと見つめ、キッと身を翻して、バイク屋へ向かう。
「スーパーカブ」に出会う
スクーターを見に来たがどれも親もお金もない女子高生には手の届かない値段だった。
そこへ店主が「中古なら」と言って出してきたのがスーパーカブ。
まだ500kmしか入っていないのに、一万円。
小熊が値段の理由を聞くと店主は気まずそうに「3人死なせてる」と言う。それでも小熊は「買います」と即答。
試しにカブにまたがった瞬間、灰色がかっていた世界が一瞬、鮮やかな世界に変わった。
後日、取ったばかりの免許証とナンバーを持ってバイク屋へ行く。店主から基本の扱い方と収納場所の説明を受けて、カブに乗って店を去る。
この店主、見た目は怖いのに、原付免許の問題集をくれたり、中古には適応されないであろう「購入キャンペーン」のヘルメットとグローブをくれたりと、とにかく面倒見が良かった。かわいい女子高生が藁にもすがる思いで来れば当然か。
この時、初めて自分のカブに乗って公道を走る時のBGMが最高に良い曲でした。あれはなんていう音楽ジャンルなんだろう?
帰宅し、駐輪場にカブを停める。
自分の部屋の窓から停まっているカブが見えて、思わず「にへぇ…」と笑う。かわいい。部屋からふきんを持ってきて綺麗に拭いて、眺めて「にへぇ…」。
なにもなかった生活に、宝物と思えるものができた。
後半は深夜0時過ぎ、どうしてもカブに乗って出かけたくなり、乗りこなす練習と称して夜の道へ。
人気のないコンビニに寄って駐車場にカブを停める。中でなにかを買うわけでもなく、停めたカブを眺めてにへぇと笑う。自分で手に入れた大切なものを眺めてにやにや。
ずっと忘れてましたが、この感覚が私にもあった気がする。多分誰でもあるんじゃないでしょうか。
いざ帰ろうとすると、エンジンがかからない。何度も正しい手順でやってもエンジンはかからない。ここの絶望感はとてもリアルで、「やっちまった感」で胃がキュッとなった。
理由も分からず、なすすべもなく、その場に座り込む。コンビニから出てきたトラックの運転手が声をかけてくるが、小熊は「大丈夫です」と言ってしまう。その運転手がトラックに乗り込む前、チャリーンと小銭を落とす。
運動をしていない40代以上特有の、ガチガチの前屈で拾っているのがツボ。
ただ小熊はその場面を見て、バイク屋の店主がカブの収納のフタを、10円玉で閉じていたのを思い出す。
祈るような思いで収納を開けると説明書があり、エンジンのかからない理由がガス欠だと判明。説明書の予備燃料の使い方を見て、無事帰宅することができた。
玄関に入ると、安堵から緊張が解けてぐだっと倒れ込む。そのまま寝てしまい、朝のアラームが鳴ってエンディングへ。
感想・レビューまとめ
アニメの静けさに反して
なんじゃこれ! すげえ!
と叫びたくなるようなクリティカルに好みな作品でした。
感想を書き始めてしまった以上、これを書き終えないと2話を見られないので1話を何度も見ているのですが、この1話だけでもショートフィルムのように完成していると思えます。
とにかく優しい世界。
登場人物も皆やさしい。といっても1話には小熊とバイク屋の店主と通りすがりの体の硬いおっさんしか出てきませんが。
2話のタイトルが「礼子」なので、新しいメインキャラクターが出てくると思われますが、この世界観を壊さないかちょっと心配です。多分大丈夫でしょうけどね。
作画は3Dを使っている場面が結構多く、3Dモデルのクオリティは高いとは言えません。静止画も多い。ただ個人的には全然許容範囲内でした。
音楽はドビュッシーは言わずもがな、途中のBGMはMP3欲しいレベルで好みでした。ピアノのああいう音階って好き。カブのエンジン音は当然実車から録音していると思うのですが、低音重視ヘッドホンだと逆に迫力あるすぎるくらい。
ストーリーとしても、生活に何も見いだせない女子高生が、なけなしのお金で手に入れたのが「カブ」というのがすごく良い。オシャレさやかっこよさは無いけれど、実直で実用性MAX。お金がなくてもできることが格段に増える。そのカブを嬉しそうに見て「にへぇ…」と崩れる顔が良い。
今後はカブでできることが増えていって、さまざまな経験のきっかけになったり、出会いがあったりで、灰色だった小熊の生活が変わっていく話だと予想。できれば、この1話のような良い雰囲気で続いてほしい。
前のブログでゆるキャンの感想を書きましたが、ゆるキャンを見る前に想像していた内容がこのアニメのような感じでした。しずかで、癒やされる。
あと、小熊の声を担当されている声優さんは、夜道雪さんというバイク系YouTuber?ブロガー?をしつつ、アイドルや声優活動をされている方だそうです。昔ツイッターで車好き系の人からTLに流れてきた。
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